更新日 : 2023.01.13

会社で利用できる従業員貸付制度 金利や返済についても解説

一部の会社では、福利厚生の一環として従業員貸付制度が導入されています。従業員貸付制度が用意されている会社で勤務しており、その会社で定められている利用条件を満たせば、会社からの融資を受けられます。

従業員貸付制度は各社が独自に定めるものであり、利用する条件や借入金の用途、利用の流れなどは会社によって異なります。

ただし、基本的に各社は自社の社内規定を公表しない傾向にあります。そのため、福利厚生という特徴から言えることや、各種法律・各省庁の記載をもとに情報をまとめました。具体的には従業員貸付制度の概要、金利や返済などを解説していきます。

会社からお金を借りる従業員貸付制度とは

従業員貸付制度とは、会社から従業員に貸付する制度のことです。福利厚生の一環として各企業で導入されている制度であり、社内貸付制度や社員貸付制度とも呼ばれます。

従業員貸付制度は、会社独自の施策にもとづく法定外福利厚生に該当するため、法律による導入の義務はありません。法定外福利厚生には、住宅手当や通勤手当などが該当します。一方、社会保険のように法律によって義務付けられるものは、法定福利厚生と呼びます。

つまり、すべての会社で従業員貸付制度が運用されているわけではないのです。従業員貸付制度が勤務先の会社に導入されていなければ、制度を利用して貸付を受けることはできません。

従業員貸付制度が導入されているかは、就業規則を確認してみてください。一般的に従業員に適用される福利厚生は、社内規定 の一部である就業規則に記載されるからです。

給料の前払いとの違い

給料の前払いとは、出産・病気・災害などの非常時に、すでに労働した日数分の賃金を支払期日前に受け取れることです。 労働基準法第25条で「非常時払い」として定められているものが、給料の前払いにあたります。

給料の前払いは、給料を担保にした貸付ではありません。あくまでも、労働した分の賃金を先に受け取れるものです。そのため、従業員貸付制度とは、貸付かどうかという点にまず違いがあります。

また、従業員貸付制度は法律によって義務付けられていない一方、給料の前払い、つまり非常時払いは労働基準法によって定められるものであり、使用者(雇用主)は非常時に労働者に対して前払いを行なうよう義務づけられています。

よって、給料の前払いと従業員貸付制度には、貸付であるかどうか、法律による義務があるかどうかという点が異なると言えます。

従業員貸付制度は会社によって実施の状況が異なりますが、給料の前払いは会社や雇用形態にかかわらず活用できます。

出産・病気・災害などの非常時に資金が必要なら、すでに労働した分の賃金を前払いで受け取れないか勤務先の会社に相談してみてもよいでしょう。

従業員貸付制度の貸付金の使いみち

従業員貸付制度は会社独自の施策にもとづく福利厚生であるため、貸付金の用途 は会社によって異なります。会社側が明確に資金使途を定めている場合もあれば、従業員の事情に合わせて対応する場合もあるでしょう。

各社の従業員貸付の規定は公表されていないため、具体的にどのような資金使途が定められているかは断言できません。

資金使途の目安を知るための一例として、独立行政法人の高齢・障害・求職者雇用支援機構が2022 年9月に発刊した総合誌では、従業員貸付制度について「従業員の生計維持のために企業からの貸付を行なうもの」という旨が記載されています。

生計とは、暮らしをたてていくための方法や手段のことです。生計維持を目的とする資金とは生活費や緊急時に発生する費用など、生活を維持する上で必要な資金であると推測できます。

とはいえ、会社にて従業員貸付制度で貸付を受けられる用途が規定されている場合、基本的にその用途以外に借入金を使えません。そのため、希望する用途で利用できるかを確認しておく必要があります。

貸付金の用途は、従業員貸付制度に関する規定に記載されていると考えられます。用途について記載されていなかったり、用途がわかりにくかったりする場合は、上司または会社の人事部や経理部に確認してみてください。

貸付額は各社の基準によって決められる

従業員貸付制度の貸付額は、各社の基準によって決められるため、どの程度利用できるかは一概に言えません。貸付を受けられる金額は、勤務先の会社で規定されている金額の範囲内になります。

規定されている金額の範囲内であっても、用途を踏まえて妥当な金額ではないと判断されれば、希望する金額を利用できないことも考えられます。たとえば、かかった費用の何倍もの費用を希望するような場合です。

実際に、福利厚生で通勤や住居に対する手当が行なわれる場合、実際に発生した金額またはかかった費用に対して一定の割合の金額を支給する傾向があります。同じ福利厚生である従業員貸付制度でも、実際に必要な金額を加味したうえで貸付額を決める場合もあると推測できます。

そのため、必要な金額を申請する際は、どんな用途でいくら必要になるのかを、できる限り明細に説明するようにしましょう。

従業員貸付制度を利用するための条件

従業員貸付制度は会社の福利厚生の一環として導入されている制度であるため、利用するには「勤務している会社の福利厚生を受けられる従業員であること」は条件のひとつになると考えられます。

それ以外に条件があるかどうかは、福利厚生の種類や会社によって異なり、雇用形態・勤続年数などが条件に該当することも考えられます。原則的には、規定された条件を満たしていなければ貸付を受けられません。

また、場合によっては、金銭面でのトラブルを避けるために、保証人が必要になることもあるでしょう。保証人とは、債務者(本人)が返済しない場合に、債務者に代わって返済することを約束した人のことを言います。

自身が従業員貸付制度を利用できるかは、自身が勤務している会社で定められている条件を満たしているかによる、といえます。そのため、会社に従業員貸付制度があることが確認できたら、どのような条件があるのか確認しておきましょう。

非正規雇用であっても制度の利用対象になりえる

会社によって異なる場合もありますが、非正規雇用であっても従業員貸付制度の利用対象になりえると考えられます。

2020年4月に厚生労働省は、正規雇用者と非正規雇用者の待遇の格差を解消するために、「同一労働同一賃金」を施策し、不合理な待遇差を禁止したためです。

【同一労働同一賃金とは】

同一労働同一賃金の導入は、同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)との間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。
同一企業内における正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間の不合理な待遇差の解消の取組を通じて、どのような雇用形態を選択しても納得が得られる処遇を受けられ、多様な働き方を自由に選択できるようにします。
引用元:厚生労働省「同一労働同一賃金特集ページ

同一労働同一賃金では、福利厚生についても不合理な待遇格差の解消に向けた取組が必要であると記載されており、勤続年数・能力・役職が同一である場合には、雇用形態にかかわらず合理的に対応することが必要との旨も記載されています。

そのため、パートやアルバイト、派遣社員といった非正規雇用労働者であっても、会社によっては従業員貸付制度の利用対象になりえるといえます。

従業員貸付制度の利率(金利)は国税庁によって決められている

従業員貸付制度の利率は、会社によっても異なりますが、国税庁によって非課税になる利率が決められています。以下の利率を基準に貸付を受けた場合、貸付金は非課税となります。

【国税庁が定める金利の基準】

役員又は使用人に金銭を貸し付けた場合、その利息相当額は、次に掲げる利率によります。
(1) 会社が他から借り入れて貸し付けた場合・・・・・・その借入金の利率
(2) その他の場合・・・・・・貸付けを行った日の属する年に応じた次に掲げる利率
・平成22年から25年中に貸付けを行ったもの・・・・・・ 4.3%
・平成26年中に貸付けを行ったもの・・・・・・・・・・・・・・ 1.9%
・平成27年から28年中に貸付けを行ったもの・・・・・・ 1.8%
・平成29年中に貸付けを行ったもの・・・・・・・・・・・・・・ 1.7%
・平成30年~令和2年中に貸付けを行ったもの・・・・・ 1.6%
・令和3年中に貸付けを行ったもの・・・・・・・・・・・・・・・ 1.0%
引用元:国税庁「 No.2606 金銭を貸し付けたとき

金利による利息は「借入額×利率(金利)÷365日×借入日数」で算出できます。

たとえば、従業員貸付制度で年1.0%で1年間、10万円の融資を受けた場合、計算式は「10万円×年1.0%÷365日×365日」となり、利息総額は約1,000円です。この条件で支払う必要のある総額は約101,000円となります。

従業員貸付制度を利用するなら、金利が設定されているのか否かという点や適用される金利の数値を把握しておくようにしましょう。 利用後は利息を含めた金額を返済することになりますが、金利によって発生する利息を把握しておかないと、想定以上の利息を支払うことになりかねないからです。

従業員貸付制度の申し込みから貸付までの流れ

従業員貸付制度の申し込みから利用までの流れは会社にもよっても異なりますが、従業員貸付制度を利用する際の流れの一例は下記のとおりです。

【従業員貸付制度の申し込みから貸付までの流れの例】

  • 1、借入申込書の提出
  • 2、社内審査
  • 3、金銭借用証書の提出

参照元:国税庁「会社と社員の間で作成される借入申込書、金銭借用証書

貸付を受けるまでには、書類の提出や貸付の可否を決める社内審査が行なわれます。

金銭借用証書とは、金銭の貸し借りが行なわれる際に、貸主と借主が借用する書類のことです。従業員貸付制度の場合は、貸主である会社と借主である従業員の間で結ばれる、貸付条件が記載された契約書のようなものになります。

従業員貸付制度では、金銭借用証書に記載された内容をもとに貸付・返済が行なわれるので、書類はなくさないよう管理しましょう。

申込時に必要書類の提出を求められる場合がある

従業員貸付制度の申込時には、借入申込書をはじめ必要書類の提出を求められることも想定されます。一般的に、会社の福利厚生を利用する際には書類の提出が必要なためです。たとえば、住宅手当では、家賃額が記載された証明書や領収書の写しなどが求められます。

従業員貸付制度も福利厚生なので、書類の提出が必要になると推測できます。たとえば、必要経費の見積書や利用先の領収書にかかわる書類などです。

必要書類の提出が行なえないと貸付を受けられない可能性もあることから、利用を申し込むときには、提出が必要な書類がないかもあわせて確認しておきましょう。

社内における審査が行なわれる可能性はある

従業員貸付制度の利用を申し込むと、申込内容に対して社内審査が行なわれる可能性があります。

従業員貸付制度はそもそも各社によって規定されるものであり、社内審査の内容は公表されていません。しかし、社内で審査が行なわれると考えれば、社内で把握できる情報や申し込んだ従業員が提出した書類などをもとに貸付を行なうかを審査すると想定されます。

社内審査でみられる内容や基準は各社によって異なります。審査の詳細が気になる場合は、上司または経理・人事部の人に相談してみるとよいでしょう。

なお、従業員貸付で社内審査が行なわれる場合、信用情報を確認することはありません。

信用情報とは、ローンやクレジットなどの信用取引における利用履歴のことです。信用情報を照会できるのは、各機関の会員である金融機関に限られるからです。

従業員貸付制度を利用した後には返済する必要がある

従業員貸付制度は貸付の制度であるため、利用した場合は返済の義務を負います。返済の義務を負った場合、定められた期日までに返済をしなければなりません。

利用条件などと同様に、返済期日は会社によって異なると考えられます。円滑に返済を行なうためにも、利用時には、返済期日・返済方法などを確認しておく必要があります。

また、具体的な返済方法は会社によっても異なりますが、毎月の給与から天引きされることもあり、その場合は返済に支払った金額を差し引いた分が振り込まれることになります。

「返済をしたあとに残った給与では生活が苦しくなる」という事態にならないためにも、従業員貸付制度を利用する場合、生活を圧迫しない範囲内で利用できる計画を立てたうえで申し込みの手続きを行ないましょう。

退職時には一括返済が必要になることがある

従業員貸付制度を利用したあと、残高がある状態で退職をする場合、退職時に一括での返済が必要となることも考えられます。

従業員貸付制度は、会社の福利厚生の一環として導入されている制度です。会社から退職した場合は福利厚生を受けられる対象から外れるため、一括での返済を求められると想定されます。

退職時に残高がある場合は、一括での返済が必要になるかを確認したうえで、返済できない事情があるなら人事や経理部の担当者に事前に相談しておきましょう。場合によっては、退職金から残高が差し引かれるといったことも考えられます。

従業員貸付制度を利用するときのQ&A

従業員貸付制度を利用するときに知っておくべき事項をQ&A形式でまとめたので、制度の利用を兼用している場合は参考にしてみてください。

【従業員貸付制度を利用するときのQ&A】

利用後に返せないとどうなりますか?

従業員貸付制度で会社から貸付を受けたお金を返済できなかった場合、遅延損害金の支払いを求められると考えられます。遅延損害金とは、金銭の貸付において債務の不履行があった場合の損害賠償のことです。

民法412条をみると、貸付を受けた者の支払いが遅滞した場合に、貸付金に対して遅延損害金を支払う義務を負うと記載されています。

一般的に金銭の貸付が行なわれる際には、支払いが遅滞した際に支払う義務がある遅延損害金の利率が定められているので、貸付時の契約書などから確認しておきましょう。

従業員貸付制度で融資を受けるまでの期間はどのくらいかかりますか?

従業員貸付制度で貸付を受けるまでにかかる時間は、会社によって異なる場合もあれば、用途によって異なる場合もあると考えられます。
たとえば、利用を申し込んだあとに行なわれる社内審査で行なわれる工程が多い場合には、貸付までに時間がかかることも考えられます。緊急性の高い用途であれば、申込者の状況を踏まえたうえで、貸付を受けるまでの時間が短縮されることもありえるでしょう。

そのため、急ぎの事情がある場合には、申込時に貸付を受けるまでにかかる時間の目安を確認しておきましょう。融資を受けるまでの期間が想定以上に延びる場合は、人事や経理部の担当者に相談することも検討してみてください。

従業員貸付制度の利用が社内で知られることはありますか?

社内貸付制度は福利厚生の一環であり、人事または経理部の担当者などを通じて申し込みから利用までの手続きを行ないます。

そのため、貸付を受けるまでの手続きにかかわる社内の人には、従業員貸付制度の利用が知られることになります。会社の規定にもよりますが、場合によっては直属の上司への申告が必要になることもあるでしょう。

手続きを行なう担当者や上司以外に知られるかどうかは、一概に言えません。とはいえ、従業員貸付制度の利用をするにあたって事情を説明したり書類を提出したりしているところを見られれば、知られる可能性はゼロとはいえません。

少なくとも、手続きに関わるには利用を知られるため、社内で誰にも知られずに従業員貸付制度を利用することはできないと言えます。

制度の利用を知られたくない場合は、書類の提出は封筒に入れて行なったり、周りに人がいない状況で相談したりするのも一つの手です。

FP監修者プロフィール

人物 飯田 道子氏 ファイナンシャル・プランナー(CFP®)
氏名 飯田 道子 FP・飯田道子氏の詳細
保有資格 ファイナンシャル・プランナー(CFP認定者)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士
証券外務員Ⅱ種
宅地建物取引士合格者

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