更新日 : 2023.01.11

看護師等修学資金貸与制度

看護師等修学資金貸与制度は、将来看護業務に勤める意思がある人に対して、修学にかかる費用を貸与する公的制度です。現時点で大学や専門学校、大学院などに通っている人が看護師等修学資金貸与制度の対象となります。

看護師等修学資金貸与制度は無利子で修学費の貸付を行っており、特定の条件を満たすことで返還が免除される可能性がある制度です。

そこで、看護師等修学資金貸与制度の概要とともに、利用条件や返還が免除される人の例、申請手続きについて解説していきます。

看護師等修学資金貸与制度とは

看護師等修学資金貸与制度とは、将来看護業務に勤める意思があり、学校などの養成施設に通っている人を対象に貸与を行なう公的制度です。経済的な理由で修学が難しい人へ修学にかかる資金を貸与することにより、看護職員を確保するために定められました。

看護師等修学資金貸与制度は都道府県を主体に実施されており、利用することで学費などの修学にかかる資金を貸付しています。

【看護師等修学資金貸与制度】
貸付対象 将来看護業務に勤める意思があり、看護に関する学校や養成施設に通っている人
貸付上限額 通っている養成施設や専攻しているコースによって異なる
・保険師修学資金
月額32,000円(民間立養成施設の場合は月額36,000円)
・助産師修学資金
月額32,000円(民間立養成施設の場合は月額36,000円)
・看護師修学資金
月額32,000円(民間立養成施設の場合は月額36,000円)
・准看護師修学資金
月額15,000円(民間立養成施設の場合は月額21,000円)
・大学院修学資金(修士課程)
月額83,000円(国外の大学院の場合は月額200,000円)
連帯保証人 必要
貸付利子 無利子

参照元:厚生労働省「・看護師等修学資金の貸与について(◆昭和37年06月19日発医第177号)」

看護師等修学資金貸与制度では無利子で貸付を受けれますが、利用するには連帯保証人を立てなければなりません。連帯保証人とは返還がない場合に、修学資金の貸与を受けた人に代わって返還することを約束した人のことです。

都道府県によっては、連帯保証人になるための条件や連帯保証人として立てなければならない人数などが定められている場合があります。看護師等修学資金貸与制制度を利用する場合、住んでいる地域が公表する連帯保証人の条件なども確認しておくと良いでしょう。

看護師等修学資金貸与制度に対応していない地域もある

都道府県によっては、看護師等修学資金貸与制度に対応していない場合があります。47都道府県のうち、2021年9月時点で看護師等修学資金貸与制度に対応していないのは下記のとおりでした。

※各府県名に参照元のページがあります。

制度に対応していない地域に住んでいる場合、看護師等修学資金貸与制度を利用できません。

なお、看護師等修学資金貸与制度に対応していない地域でも、他の奨学金制度を採用している場合もあります。

たとえば、大阪府の場合、看護師等修学資金貸与制度を説明している「大阪府/大阪府看護師等修学資金」というページにて、日本学生支援機構の奨学金制度の紹介がされています。

看護師等修学資金貸与制度に対応していない地域に住んでいる場合、他の奨学金制度が採用されていないかを調べてみてください。

条件を満たす人は返還が免除される

看護師等修学資金貸与制度では、定められた条件を満たしていれば返還が免除されます。返還が免除になる条件は都道府県によって異なり、たとえば東京都の場合、返還が免除になる条件が下記のように定められています。

  • 養成施設などの卒業や免許の取得後、直ちに指定施設で引き続き5年間看護業務に従事した場合
  • 大学院修士課程修了後、1年以内に都内医療機関で引き続き5年間看護業務に従事した場合

参照元:東京都福祉保健局「看護師等修学資金貸与事業 東京都福祉保健局」

条件を満たせない場合は、看護学校などの養成施設を卒業後に貸付された修学資金を全額返還しなければなりません。ここからは、看護師等修学資金貸与制度の返還が免除されるパターンを解説していきます。

返還が免除される人と免除されない人の例

ここでは、下記の前提条件をもとに、看護師等修学資金貸与制度の返還が免除されるパターンと免除されないパターンを解説します。

  • 住んでいる地域:東京都
  • 通っている施設:看護の専門学校
【返還が免除されるパターンと免除されないパターンの例】

返還が免除されるパターンと免除されないパターンの例

東京都福祉保健局では、養成施設等卒業・免許取得後、直ちに指定施設で引き続き5年間看護業務に従事した場合に返還が免除されます。

そのため、東京都の場合、専門学校卒業からすぐに指定の施設で5年間働くことで、看護師等修学資金貸与制度の返還が免除されます。

しかし、職場が指定の施設ではなかったり、卒業から勤務までに期間が空いたりすると、条件を満たせないため、看護師等修学資金貸与制度の返還が免除されません。

看護師等修学資金貸与制度の返還が免除される条件は、地域によって異なります。看護師等修学資金貸与制度を利用する場合、返還が免除される条件を確認しておくと良いでしょう。

看護師等修学資金貸与制度の利用条件

看護師等修学資金貸与制度の利用条件には、「卒業後貸与を受けた都道府県の区域内で看護職員の確保が困難な施設で働く意思がある」「養成施設に在学している」があります。

「看護職員の確保が困難な施設」に関しては、状況の変化などによって指定施設が変わるため、在籍している養成施設に問い合わせてみると良いでしょう。

もう一つの条件である「養成施設に在学している」という条件に関しては、具体的に下記のような人が該当します。

  • 大学の保健師・助産師・看護師コースを専攻する人
  • 専門学校の保険師・助産師・看護師・准看護師コースを専攻する人
  • 大学院の保険師・助産師コースを専攻する人

参照元:東京都福祉保健局「指定施設一覧」

たとえば、看護師コースを専攻する大学生や専門学生、大学院生であれば、「養成施設に在学している」という条件を満たせます。

ただし、都道府県ごとに看護師等修学資金貸与制度の利用条件が定められています。住んでいる地域で定められた条件を満たせなければ、看護師等修学資金貸与制度を利用できません。

ここからは、看護師等修学資金貸与制度を利用できない人の例を解説していきます。

看護師等修学資金貸与制度を利用できない可能性がある人の例

都道府県によっては、看護師等修学資金貸与制度の利用条件が公表されています。そこで、公表されていた利用条件をもとに、看護師等修学資金貸与制度を利用できない可能性がある人をまとめてみました。

看護師等修学資金貸与制度を利用したい場合、自分が該当しうる項目を確認してみてください。

所得が基準を超えている

都道府県によっては、看護師等修学資金貸与制度の利用条件に所得の基準を設けている場合があります。

3 経済的理由により修学困難であること。(第二種のみ、申込時に所得制限有り。)
引用元:東京都福祉保健局「制度の概要 東京都福祉保健局」

東京都では、看護師等修学資金貸与制度の貸与が「第一種」「第二種」の2種類あり、返還免除の規定があるのが第一種、返還免除の規定がないのが第二種となります。

第二種のみ所得の制限が定められており、看護師等修学資金貸与制度の第二種を利用するには、所得が定められた基準を超えていない必要があるのです。

東京都福祉保健局に電話調査したところ、「明確な基準は公表できないが、世帯全体の収入が多いと貸与とならない可能性がある」との回答が得られました。

東京都以外でも所得の基準が設けられている可能性もあるため、看護師等修学資金貸与制度を利用する場合、所得の基準が設けられているかを確認しておくと良いでしょう。

他の制度などから学費の貸付を受けている

都道府県によっては、「他の制度などから学費の貸付を受けていないこと」を看護師等修学資金貸与制度の利用条件の一つとして定められている場合があります。

・当事業と趣旨を同じくする奨学金(給付金含む)を受けていないこと。
引用元:群馬県「群馬県 - 看護師等修学資金貸与制度」

群馬県では、奨学金を利用していたり修学にかかる給付金を受け取っていたりすると、看護師等修学資金貸与制度を利用できません。

群馬県以外の地域でも、奨学金や給付金を利用していないことが看護師等修学資金貸与制度の利用条件として定められている場合もあります。

すでに奨学金や給付金を利用している場合、看護師等修学資金貸与制度の利用条件を満たせるのかを確認しておくと良いでしょう。

成績不良だと判断された

都道府県によっては、成績不良だと判断されると看護師等修学資金貸与制度を利用できない場合があります。

【埼玉県が定める対象者】

身体が強健であり、品行方正であって、学業成績も優秀である者
引用元:埼玉県「埼玉県看護師等育英奨学金貸与制度について - 埼玉県 」

埼玉県以外の地域でも、学業の成績が看護師等修学資金貸与制度の利用条件の一つとして定められている場合があります。場合によっては、「授業の単位を落とした」という人は成績不良と判断される可能性があり、看護師等修学資金貸与制度を利用できないことも考えられます。

卒業後に看護師などとして働く意思が見られない

卒業後に看護師などとして働く意思が見られないと判断された場合、看護師等修学資金貸与制度を利用できない可能性があります。

・卒業(免許取得)後、県で定める返還免除対象施設において、所定の期間以上継続して看護職員の業務に従事する意思が堅固であること。
引用元:群馬県「群馬県 - 看護師等修学資金貸与制度」

「意思が堅固であること」と条件で定められている以上、群馬県の看護師等修学資金貸与制度を申請する場合、今後看護職員として働く意思があるかを質問などで確認されると想定されます。
その場合、働く意思が見られないと判断されれば、看護師等修学資金貸与制度を利用できないと考えられます。

看護師等修学資金貸与制度を利用する場合、「どのような施設で働くのか」「どのくらいの期間働くのか」のような卒業後のことについて考えておくようにしましょう。

看護師等修学資金貸与制度を申請する方法

看護師等修学資金貸与制度を申請するには、現時点で在学している養成施設に申込書を提出する必要があります。看護師等修学資金貸与制度の申込書は、住んでいる都道府県から通っている養成施設を通して配布されます。

看護師等修学資金貸与制度の申請手続きの細かな流れは都道府県によって異なりますが、大まかには下記のような流れで申請手続きが進みます。

1.申込書を養成施設から受け取る
2.申込書に個人情報などを記入する
3.申込書と必要書類を養成施設に提出する
4.審査が行なわれる
5.審査結果が養成施設を通して通知される
6.申請者が指定した口座に振り込まれる

地域ごとに申請期限が定められている

看護師等修学資金貸与制度を利用するには、地域ごとに定められている申請期限までに手続きを済ませておく必要があります。

看護師等修学資金貸与制度の申請期限は地域によって異なりますが、例年4月ごろから受付が開始される傾向があります。

実際に、関東地方では、どの地域も令和3年の看護師等修学資金貸与制度の受付を4月ごろから開始しています。

年度によって時期が異なる場合も考えられるため、事前に申請期限を確認しておく必要はありますが、看護師等修学資金貸与制度を利用する場合、4月ごろから申請手続きを行なえることを想定して、必要書類の準備などをしておくと良いでしょう。

申請時には必要書類の提出が求められる

看護師等修学資金貸与制度を申請する場合、必要書類の提出が求められます。

提出が求められる必要書類は、住んでいる地域などの申請者の状況によって変わります。しかし、看護師等修学資金貸与制度に対応する都道府県では、いずれの地域でも下記は提出が求められます。

【提出が求められる必要書類】
必要書類 備考
修学資金貸与申込書 養成施設を通じて都道府県から配布される書類
申込者や扶養者の住民票
扶養者などの収入証明書類 源泉徴収票や確定申告書等、収入を証明できる書類
看護師等修学資金口座振込依頼書 養成施設を通じて都道府県から配布される書類
連帯保証人の印鑑登録証明書 連帯保証人となる人全員の証明書が必要
連帯保証人の収入に関する証明書類 連帯保証人となる人全員の書類が必要
連帯保証人の住民票 連帯保証人となる人全員の住民票が必要

なお、東京都福祉保健局では、必要書類に不備があると審査の対象外になります。

他の地域でも同様に審査の対象外となり得るため、看護師等修学資金貸与制度を申請する場合、事前に提出する必要書類を用意しておきましょう。

看護師等修学資金貸与制度の返還方法

看護師等修学資金では、免除にならなければ、修学資金を返還しなければなりません。

看護師等修学資金貸与制度の返還は、原則養成施設を卒業した後から開始されます。利用者が指定した口座から、毎月一定額が引落される形で返還は行なわれます。

毎月の返還額に関して東京都福祉保健局に電話調査しましたが、「貸与金額や貸与期間などは利用者の状況によって異なるため、一概には言えない」との回答が得られました。

看護師等修学資金貸与制度の返還が免除にならない場合、返還が開始される前までに住んでいる地域の担当課に問い合わせるなどして、毎月の返還額を把握しておくようにしましょう。

貸与金の全額返還が求められる場合もある

看護師等修学資金貸与制度では、利用者の状況次第で、貸与された修学資金の全額返還が求められる場合もあります。

  • 養成施設を退学した
  • 養成施設在学中に利用者が死亡した
  • 心身の故障により修学の見込みがないと判断された
  • 修学資金の貸与を受けることを辞退した
  • 養成施設を卒業した日から1か月以内に市内の医療施設において看護業務に従事しなかった
  • 養成施設を卒業した日から1年以内に看護師などの免許を取得できなかった
  • 返済が免除されると決定する前に、市内の医療施設における看護業務をやめた

参照元:川崎市「川崎市:看護師等修学資金貸与制度について」

全額返済が求められた場合、看護師等修学資金貸与制度の返済額を用意できずに、延滞を起こす危険性も想定できます。

看護師等修学資金貸与制度の返還に遅れた場合、返還額の100円につき年14.5%の延滞利子が適用されます。

そのため、看護師等修学資金貸与制度で全額返還が求められ、返還額を用意できなかった場合、支払いに遅れれば遅れるほど延滞利子が発生し、支払総額が増加してしまうのです。

看護師等修学資金貸与制度を利用する場合、基本的には全額返還とならないように注意してください。やむを得ない事情がある場合、返還額が用意できる見込みを立てたうえで、全額返還をするようにしましょう。

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