更新日 : 2022.12.22
生活保護を受ける条件を解説 保護費の金額はいくらになるのか?
生活保護制度は、健康で文化的な最低限の生活を保証し、その自立を助長する制度です。
生活保護の要件にあてはまる対象者に対し、生活を営む上で必要な保護費が支給されます。支給される保護費は、対象者の年齢や世帯人数などによって異なります。
そこで、生活保護を受けるための要件や支給される保護費の金額などにくわえて、生活保護を受けるにあたっての注意点などを解説していくので、参考にしてください。
生活保護制度とは
厚生労働省で公表されている、生活保護制度の趣旨は下記のとおりです。
生活保護制度は、生活に困窮する方に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限の生活を保証するとともに、自立を助長することを目的としています。
引用元:厚生労働省「生活保護制度 |厚生労働省」
生活保護制度は、上記の趣旨にも記載があるように「最低限の生活」と「自律の成長」を目的とした制度です。また、生活保護制度の内容を規定する生活保護法にもあるように、生活保護の申請は国民の権利とされています。
生活保護を受けるには、まず保護の要件を満たしている必要があります。そして、要件を満たしている対象者に対して、年齢や世帯人数等に応じた保護費が支給されます。
なお、支給される保護費は、生活を営むうえで必要な各種費用に対応するものです。食費や被服費といった生活に必要な費用だけではなく、アパート等の家賃・義務教育を受けるために必要な学用品等・医療サービスの費用も対象となります。
生活保護の申請・相談窓口
生活保護の相談・申請は、現在住んでいる地域を管轄する福祉事務所の生活保護担当窓口で行なえます。
福祉事務所は、市では市が、町村では都道府県が設置しています。そのため、町村に住んでいる場合は、近くに福祉事務所がないことがあります。住んでいる町村に福祉事務所が設置されていない場合は、最寄りの町村役場でも申請・相談することが可能です。
福祉事務所一覧や福祉事務所を設置している自治体に関しては、厚生労働省の「福祉事務所 |厚生労働省」のページに記載されているので、参考にしてください。
生活保護を受けるための要件
厚生労働省は、下記の通りに生活保護を受けるための要件を定めています。
生活保護は世帯単位で行い、世帯員全員が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限どの生活の維持のために活用することが前提でありまた、扶養義務者の扶養は、生活保護法による保護に優先します。
引用元:厚生労働省「生活保護制度 |厚生労働省」
厚生労働省は、生活保護を受けるにあたって「資産」「能力」「あらゆるもの」「扶養義務者の扶養」を活用することを要件としていることがわかります。
上記の要件に含まれる「資産」「能力」「あらゆるもの」「扶養義務者の扶養」について、厚生労働省は具体的に下記のような説明をしています。
各要件 | 要件に関する説明 |
---|---|
資産の活用とは | 預貯金、生活に利用されていない土地・家屋等があれば売却投資生活費にあてること |
能力の活用とは | 働くことが可能な場合は、その能力に応じて働くこと |
あらゆるものの活用とは | 年金や手当など他の制度で給付を受けられる場合は、まずそれらを活用すること |
扶養義務者の扶養とは | 親族等から援助を受けることができる場合は、援助を受けること |
参照元:厚生労働省「生活保護制度 |厚生労働省」
生活保護を受けるためには、資産・能力等あらゆるものを活用することを前提としています。そのため、預貯金があったり、年金や手当等を受けられる状態であったりすると、生活保護の要件を満たしていないと判断される可能性があります。
また、生活保護の支給要件については、厚生労働省が公表している以外にも、福祉事務所によって細かな規定があったり、例外的に支給要件の一部が免除されたりします。そのため、要件の詳細については、最寄りの福祉事務所に問い合わせてみるとよいでしょう。
支給される保護費の金額
支給される保護費は、厚生労働大臣が定める最低生活費と申請者の収入を比較し、収入が最低生活費に満たない場合に、最低生活費から収入を差し引いた差額が保護費として支給されます。
参照元:厚生労働省「生活保護制度 |厚生労働省」
厚生労働大臣が定める最低生活費は、住んでいる地域・年齢・世帯人数や、住宅費・教育費など必要な費用に応じて設定されます。
設定された最低生活費が現在の収入を上回っていた場合は、その差額が保護費として支給されます。ただし、収入が最低生活費を上回る場合は、保護費の支給を受けられません。
生活保護制度によって支給される保護費の目安については、厚生労働省が公表している「最低生活費の算出方法」に則って算出できます。
生活保護の種類と支給内容
保護費の基準となる最低生活費は、申請者の必要に応じ、下記の費用を加算した金額をもとに設定されます。
生活を営む上で生じる費用 | 扶助の種類 | 支給内容 |
---|---|---|
日常生活に必要な費用 (食費・被服費・光熱費等) |
生活扶助 |
記⑴⑵を合算して算出 ⑴食費等の個人的費用 ⑵光熱水費等の世帯共通費用 ※母子家庭など特定の世帯には加算があります |
アパート等の家賃 | 住宅扶助 | 定められた範囲内で実費を支給 |
義務教育を受けるために必要な学用品費 | 教育扶助 | 定められた基準額を支給 |
医療サービスの費用 | 医療扶助 | 費用は直接医療機関へ支払い(本人負担なし) |
介護サービスの費用 | 介護扶助 | 費用は直接介護事業者へ支払い(本人負担なし) |
出産費用 | 出産扶助 | 定められた範囲内で実費を支給 |
就労に必要な技能の修得等にかかる費用 | 生業扶助 | 定められた範囲内で実費を支給 |
葬祭費用 | 葬祭扶助 | 定められた範囲内で実費を支給 |
参照元:厚生労働省「生活保護制度 |厚生労働省」
食費や光熱水費等など日常生活に必要な生活扶助だけでなく、住宅扶助・教育扶助・医療扶助など、申請者の必要に応じて加算した金額の合計が、最低生活費となります。
具体的には、住宅扶助と医療扶助が必要な申請者の場合、最低生活費は住宅扶助と医療扶助にかかる金額を踏まえたうえで設定され、そこから収入を差し引いた額が、保護費として支給される形です。
なお、支給された保護費の使いみちに関する注意点として、厚生労働省では、住宅ローンなどの返済に保護費を当てることは認められないと公表しています。
生活保護の相談・申請から受給するまでの流れ
生活保護の相談・申請から受給までの手続きは、居住する地域を所管する福祉事務所にて行ないます。具体的な手続きの流れは下記の通りです。
1.事前の相談
2.保護の申請
3.保護費の支給
参照元:厚生労働省「生活保護制度 」
生活保護制度の仕組みや各種社会保障施策等の活用について十分な説明を受けるために、生活保護を受けるには事前の相談が必要です。
福祉事務所で生活保護の申請をしたあとは、保護の決定のために、福祉事務所によって生活状況や資産などに関して調査が行なわれます。調査が完了し、福祉事務所によって生活保護を受けられると判断されれば、保護費が支給される流れです。
事前の相談
生活保護について事前の相談をする場合は、お住まいの地域を所管する福祉事務所の生活保護担当の窓口へ出向く必要があります。居住する町村に福祉事務所がない場合は、町村役場の窓口にて相談が可能です。
窓口では、生活保護制度に関する説明だけでなく、生活福祉資金や各種社会保障施策等の活用に関する説明を受けられます。
そのため、生活保護を受けたほうがよいのか、他の給付金等を活用したほうがよいのかがわからないなどの場合は、適切に支援を受けるための方法もあわせて相談するとよいでしょう。
保護の申請
生活保護の申請は、事前の相談と同じく、福祉事務所の生活保護担当の窓口で行なえます。
申請を行なったあとは、福祉事務所によって下記の調査が実施されます。
- 生活状況等を把握するための実地調査(家庭訪問)
- 預貯金、保険、不動産の資産調査
- 扶養義務者による扶養(仕送り等の援助)の可否の調査
- 年金等の社会保障給付、就労収入等の調査
- 就労の可能性の調査
参照元:厚生労働省「生活保護制度 |厚生労働省」
生活保護の申請を受けた福祉事務所は、保護を受けられるかどうかや、支給する保護費を決定するため、上記のような調査を行ないます。
調査は、訪問と書面の両方で行なわれます。たとえば、生活状況等を把握するための実地調査は訪問での調査となると公表されています。
なお、扶養義務者による扶養を受けられるか否かについては、基本的に書面での照会となります。ただし、夫婦や中学3年生以下の子の親に対しては、福祉事務所のケースワーカーが実際に会って扶養できないか否かを照会します。
保護費の受給
福祉事務所による調査が完了し、生活保護を受けられると判断されれば、所定の保護費が毎月支給されます。生活保護の申請をしてから受給できるかどうかわかるまでにかかる時間は、原則として、申請をした日から14日以内です。
ただし、調査に日時を要する特別な理由があるときには最長30日かかる場合もあります。
なお、生活保護の申請をしてから生活保護が開始されるまでの生活費が足りないときには、臨時特例つなぎ資金貸付という制度を利用して貸し付けを受けることもできるため、必要な場合は福祉事務所に相談してみましょう。
生活保護の相談・申請に必要な書類
生活保護の申請に相談・申請にあたって、厚生労働省では必要になる書類は特別ないと公表されています。
ただし、生活保護の申請をしたあとに、世帯の収入・資産等の状況がわかる書類として、通帳の写しや給与明細書などの提出を求められる場合があります。
実際に生活保護を申請する福祉事務所や申請者の状況によっても、必要な書類は異なる可能性があるため、生活保護の事前相談をする際には、必要になる可能性がある書類についても確認しておくとよいでしょう。
生活保護を受給したあとの注意点
生活保護を受けるにあたっては、生活保護の受給後における注意点が公表されています。下記の注意点は、生活保護を受給するうえでの義務でもあるため、事前に確認しておきましょう。
- 生活保護の受給中は収入の状況を毎月申告する必要がある
- 福祉事務所のケースワーカーが年数回の訪問調査を行なうことがある
参照元:厚生労働省「生活保護制度 |厚生労働省」
厚生労働省「000693930.pdf」(生活保護制度の概要)
生活保護を受給したあとは、収入状況について毎月申告する必要があります。そのため、給付金等の手当・親戚等からの援助・就労による収入の金額などに変化があった場合は、福祉事務所のケースワーカに申告するのを忘れないようにしましょう。
また、福祉事務所は、世帯の実態に応じて、年数回の訪問調査を行なうことがあります。福祉事務所から、生活の維持や向上などのために必要な指導または指示を受けたときには、これに従わなければなりません。
生活保護の受給後は、自身の世帯の状況によっても、必要な対応が異なる場合があります。生活保護の受給が決まったあとは、自身が行なう必要のある対応について、福祉事務所の担当者に確認しておくとよいでしょう。